大喜利ポエム #021 「たぬき・シャネル・電光掲示板」

目黒駅前にたぬきが出現。相武紗季が交差点で追突した次の日の早朝だった。冬の朝の空気は澄んでおり、静かな重みだけが時折寄せては返すだけの風景にたぬきが現れたのだ。


バス停には妹が待っていた。ロータリーに大井競馬場行のバスが入ってきて共に乗り込む。

「バスが来なかったの。全然」おなかの大きくなった妹は荷物を持たされた子供のように不機嫌で、赤いシャネルの鞄を持っていた。もう車には乗らないほうがいいんじゃないかと聞くと、「しょうがなんや、母は仕事だし姉さんは車持ってないしで。しょうがないんや」と。

妹が不機嫌なのも無理はない。実際バスは来なかったし、家族の彼女への扱いはあまりにおざなりだった。まだ暗いうちにはもうすることがなくなっていたのに、バスに乗れたのは7時近くになっていた。明るくなった駅前からはウエンディーズがなくなって一層寂しくしていた。ウエンディーズはその後、何になるのだろうか。おおかたすき家にでもなるのだろうと思っていたら、本当にすき家になった。


バスは兄を迎えに行くために走る。兄は手相専門の整形外科医になると言って家を飛び出し、結果的にはサッカー選手になった。手相を変えたことで人生が変わることを、彼は身をもって証明した。しかし、おかしな所までつけた結果、彼は今留置場にいる。色狂いになってしまった兄は、もう誰も手をつけられなかった。手相はこんなにも簡単に人の未来を強引に変えてしまうのだ。

兄が毒気にやられる前、まだまともだった時には、概ねのことが手相で決まることをよく聞いた。そして、透明人間になった今、われわれが為すべきことはなにか。それは女湯をのぞくことだ。


体だけの割り切ったお付き合いをしている友人の親父がお寺の住職で、の鐘つき機が高いことを愚痴っていたことを思い出した。業者が奈良に1つしかないのだと。決まった時間に鐘つきがないと苦情がくるらしい。くそ坊主も近隣の皆様によって生活させてもらっているのだからそれくらいは仕事しろよなと思う。


「たぬきは何をしにきたのか?」パチンコ屋の宣伝をしたり、隣のカメラ屋で100円パソコンを売ったりしていたのは兄だった。電光掲示板に書かれていたのは私の行き先で、そこには私の帰る家があった。性欲があふれてバスを爆破。まぁ、あの小さなバス溜まりにそんな設備があればのことだが。


明日はひな祭りでものごころもついていない子供を奉るのだ。